Xで投資情報を探していると、投資に関する情報を発信している人からDMが届くことがあります。
中には、明らかにAIで作ったような文章で、いかにも怪しいものもありました。
一方で、子どもの写真を載せていて、子育て中の主婦という設定。
買い位置や利確位置なども丁寧に教えてくれる。
文章も親切です。
最初は「本当に親切な人なのかもしれない」と思いました。
今振り返ると、子どもの写真を載せたり、主婦という立場を前面に出したりすること自体が、相手に安心感を持たせるための演出だった可能性もあると思います。
実際、私はその人を信用してLINEに登録してみました。
そして、そこでかなり興味深い体験をしました。
LINEの中には、驚くほど多くの参加者がいた
LINEに登録すると、「先生」と呼ばれる人物と、助手の若い女性が運営している投資グループでした。
参加者の多さにも驚きました。
毎日の相場について説明があり、
- これから注目されそうな銘柄
- 買い位置
- 利確位置
- チャートの見方
- 大口投資家がどのように動いているか
- 市場の状況
など、投資についての情報が次々と出てきます。
読んでいると、
「なるほど」
と思うことも多い。
「こんなことまで無料で教えてくれるなんて、すごい時代になったものだな」
と、最初はそんな感想を持っていました。
ところが、途中から少しずつ話がおかしくなってきました。
「一般の証券口座ではできない」という話
あるとき、
「一次口座」
「機関投資家専用口座」
「プロフェッショナル口座」
などと呼ばれる特別な口座を開設すると、一般の証券会社ではできない取引ができ、もっと利益を得られるという話が出てきました。
「寄り付き前に売買できる」
「一般の投資家とは違う条件で取引できる」
といった説明です。
参加者も次々と専用口座を開設していきます。
そして、
「○○万円利益が出ました!」
「今日は○○万円取れました!」
という報告がグループ内に次々と投稿される。
それを見ていると、正直なところ、
「少額なら試してみてもいいかもしれない」
と、一瞬思いました。
ここは今でもよく覚えています。
私は最終的にはやりませんでした。
でも、「絶対にありえない」と最初から完全に無関心だったわけではありません。
「おかしい」と思って、調べてみた
そこで、自分でも調べてみました。
一般の個人投資家が、本当に「機関投資家専用口座」のようなものを開設できるのか。
そんな特別な口座が本当に存在するのか。
調べていくと、私が説明されていた内容には疑問があることが分かってきました。
さらに、先生として紹介されている人物も、投資界隈では知られている人物の写真を使っているようでした。
でも、本当に本人が運営しているのかは分かりません。
ネット上の写真なら、第三者が勝手に使用することもできます。
そこで、
「これは関わらない方がいい」
と判断しました。
金融庁も、SNSや広告などをきっかけにLINEなどのクローズドチャットへ誘導し、「先生」や「アシスタント」が投資情報を提供した後、専用口座への入金を促す投資詐欺について注意喚起しています。
また、利益が出ているように見せた後、出金しようとすると手数料や保証金、税金などの名目で追加の送金を要求されるケースも紹介されています。
それでも、何度も勧誘は続いた
専用口座を開設しなかった後も、
「まだ口座開設しませんか?」
とメッセージが来ました。
そこで、
「寄り付きで買えないということですが、できれば自分が普段使っている証券口座で取引したい」
という趣旨の返事をしました。
すると、
「同じようには買えないので、よかったら私が操作することもできますよ」
という返事が来ました。
私は、
「いやいや、どこの誰かも分からない人に、自分の大切なお金を操作してもらうなんてありえない」
と思い、断りました。
その後はLINEグループをほぼ放置し、毎日の相場解説などを見るだけにしていました。
最後には「小判でも入金できますか?」という話まで
しばらくすると、参加者の投稿にも違和感を覚えるようになりました。
「家に小判があるけれど、これでも入金できますか?」
「銀行は大金を下ろすといろいろ聞かれるから面倒」
といった発言が出てきたのです。
もちろん、その参加者が本当に存在していたのか、投稿がすべて本物だったのか、私には確認できません。
ただ、もしこれらのやり取りまで仕組まれていたのだとしたら、
「家にある現金や金など、換金できる資産まで出させようとしているのではないか」
と感じました。
その後、少しずつ参加者が減っていき、数か月するとLINEグループ自体が終了しました。
私はそこで完全に離れました。
私がこの経験から考えたこと
この出来事で、私は「投資詐欺は怖い」ということだけではなく、別のことを考えるようになりました。
それは、
なぜ、人は「ちょっと怪しいかもしれない」と思いながらも、その話に引っ張られてしまうのだろう?
ということです。
詐欺に遭う人が、特別に判断力がない人だからなのでしょうか。
私は、そう単純な話ではないと思っています。
私自身も、
「少額なら試してみてもいいかもしれない」
と一瞬思ったからです。
疲れていると、調べることすら面倒になる
会社員として働いている人。
子育てをしている人。
家族のことを考えている人。
毎日の仕事や家事で疲れている人。
お金のことを心配している人。
そんな状態でスマートフォンを開いて、
「みんな利益が出ています」
「今だけです」
「この銘柄は上がります」
「あなたも今から参加できます」
と次々に言われたら、冷静に一つひとつを調べること自体が面倒になることがあります。
「みんながやっているなら大丈夫かな」
「少額ならいいかな」
「今やらないと自分だけ損するかも」
そんな気持ちになる。
そして、あとから冷静になって、
「なんであんなことを考えたんだろう」
と思う。
私は、ここに投資をする上でも大切なことが隠れているように感じました。
「エネルギーが漏れている」と、自分で判断できなくなる
私は最近、自分の状態を「エネルギー」という言葉で考えるようになりました。
仕事で疲れている。
睡眠が足りない。
家族のことで頭がいっぱい。
お金のことで不安。
人間関係で疲れている。
そんな状態では、いつもの自分なら簡単にできることができなくなることがあります。
調べる。
比較する。
一度立ち止まる。
「本当にそうなの?」と考える。
こうしたことに使う余力がなくなっている。
だから私は、
「騙されないためには知識だけでは足りないのではないか」
と思うようになりました。
自分がどんな状態にあるのかを知ることも大切なのではないか、と。
「爬虫類脳」という言葉で考えてみる
私は、自分の状態を分かりやすく理解するために、ここではあえて「爬虫類脳」という言葉を使っています。
ただし、これは現代の脳科学をそのまま表した言葉ではありません。
「危険を避けたい」
「すぐに報酬が欲しい」
「取り残されたくない」
「みんなと同じことをしたい」
といった、目の前の刺激に強く反応してしまう自分を理解するための比喩として使っています。
例えば、
「みんな儲かっています」
という投稿を見た。
↓
自分だけ取り残されているような気がする。
↓
「早く参加しなければ」
↓
調べるより先に行動したくなる。
これは投資詐欺だけの話ではありません。
株式投資でも、似たようなことが起こります。
株が急騰すると、なぜ飛びつきたくなるのか
例えば、保有している株が大きく上がった。
SNSを見ると、
「まだ上がる!」
「乗り遅れるな!」
という投稿がたくさんある。
すると、
「今買わないと!」
と思ってしまう。
本当は、
「この会社の業績はどうなのか?」
「今の株価は割高ではないか?」
「自分が決めた買い条件を満たしているか?」
と確認した方がいい。
でも、そんなことを考える前に買ってしまう。
これが、いわゆる「飛びつき買い」です。
逆に、利益が出ると早く売ってしまう
これも私自身、投資を勉強する中で考えるようになったことです。
例えば、
10万円の利益が出た。
「嬉しい!」
でも同時に、
「これ以上減ったら嫌だ」
という気持ちが出てくる。
そして、早く利益を確定してしまう。
一方で、10万円の含み損になると、
「もう少し待てば戻るかもしれない」
と損切りできない。
結果として、
小さな利益はすぐ確定するのに、大きな損失を抱えてしまう。
テクニカル分析を知らないから起きることもあるでしょう。
でも、知識があっても同じことをしてしまう人はいます。
そこで私は、
「テクニカルを勉強するだけでは足りないのではないか?」
と思うようになりました。
詐欺に引っかからないことも、投資で冷静に判断することも、最初は同じなのかもしれない
もちろん、投資詐欺と通常の株式投資を同じものとして扱うことはできません。
でも、
「自分が今どんな状態なのかを把握する」
という点では、共通する部分があると思っています。
疲れている。
焦っている。
取り残されたくない。
お金を増やしたい。
損を取り返したい。
誰かに答えを教えてほしい。
そんな状態では、普段ならしない判断をしてしまうことがあります。
だから私は最近、
「チャートを見る前に、自分を見る」
ということを意識するようになりました。
投資で大切なのは「知識」だけではない
テクニカル分析は、とても面白いです。
私自身も勉強してきて、
「なるほど、こういうふうにチャートを見るのか」
と、見える世界が変わった経験があります。
銘柄の選び方も、
「何となく上がりそう」
ではなく、
「なぜこの銘柄なのか?」
「どんな人が欲しがるのか?」
「今の価格はどうなのか?」
と考えるようになりました。
でも、どれだけ知識を持っていても、
自分の状態をコントロールできなければ、その知識を使えないことがあります。
焦っているときは飛びつく。
怖いときは逃げる。
欲が出るとルールを変える。
損をすると取り返したくなる。
利益が出ると怖くなる。
だから、
「投資の知識を増やす」ことと同時に、「自分がどういう状態で判断しているのかを知る」ことも必要なのではないか。
最近、私はそう考えています。
「自分のお金を、自分で判断する」ということ
今回の投資詐欺を見ていて、最後に強く感じたのはこれでした。
「先生が言ったから買う」
「みんなが儲かっているから参加する」
「この人が操作してくれるから任せる」
ではなく、
自分のお金をどうするのか、自分で理解して、自分で判断する。
もちろん、専門家の意見を聞くことは悪いことではありません。
私自身も、いろいろな人から投資を学んできました。
でも、
「教えてもらうこと」と「自分で判断できること」は違います。
誰かに答えをもらい続けるのではなく、
「なぜ私はそう判断したのか」
を自分で説明できるようになる。
そこが、投資を続ける上で大切なのではないかと思っています。
最後に
私は今回の経験で、投資詐欺を見抜くためには、
「怪しい人を見抜く能力」
だけではなく、
「自分が今、冷静に判断できる状態なのか?」
を確認することも大切なのではないかと考えるようになりました。
疲れている。
焦っている。
不安になっている。
取り残されたくない。
早く結果が欲しい。
そんなときほど、一度立ち止まる。
そして、
「今の私は、なぜこれをやろうとしているんだろう?」
と自分に聞いてみる。
これは投資詐欺から身を守るときだけでなく、株式投資で自分のルールを守るときにも役立つかもしれません。
私自身も、まだ勉強の途中です。
だからこそ、これからも実際に投資をしながら、
「自分はなぜ、こう判断したのか」
を記録していきたいと思います。
チャートを見る前に、自分を見る。
最近、そんなことを考えています。
※この記事は私自身が経験したことをもとに、投資詐欺や投資判断について考えたものです。特定の投資商品の売買を推奨するものではありません。また、「爬虫類脳」という表現は脳の構造を科学的に説明するための用語ではなく、本文では自分の反応を理解するための比喩として使用しています。